ヴァンダンジュ、この10年、黄金の時代

90年代はリッチで、芳醇、当たり年の続いたヴィンテージで、しっかりとブドウ畑のあらゆる要素を発見でき、歴史の一幕に残るものとなった。どの年も大筋からそれず、ごく自然であって他の年よりも優れた出来の年となっている。

1989年: 熟れた年
よく太陽のあたった年で、ヴァンダンジュの時期は暑かった。仕事を始めるにあたっては悪くはなかった。ワインは今でもしなやかさを保っていて、なめらかで甘いアロマがある。1989年は本当に閉じてしまっているということがなかった。1989年のチャーミングさが一時期多くのブルゴーニュワイン愛好家の心を引いたが、今もその魅力は健在である。

1990年: ビッグな年

夏の間乾燥が続き、水不足が心配されていたので、ブドウ栽培者は手をこまねいて、やきもきしていた。結果は期待したとおりだった。糖度がかなりあがったが、とりわけ熟した年にしてはとても良い酸が保たれており、これはまれに見ることだった。ワインは前年を上回る芳醇さと素晴らしいバランスのよさを見せている。そこに酸がピリッと効いていてタンニンも程良い。 若い時点での良さを全て持ち合わせたヴィンテージであり、現時点で雄大さとポテンシャルを兼ね備えている。まだ一部堅さがあると感じられるものもある。 2つの1級のニュイについて、芳醇さよりもストラクチャーがより顕著に出ている。いずれにせよ、もし、カーヴに90年のワインをお持ちなら、まだキープしていたほうがいいでしょう。いつになっても、とても素晴らしい年と言われることは間違いないので。


1991年: 醜いアヒルの子
大変順調な天候にもかかわらず、ワインは論争の的となった。2年続いた分かりやすい年の後で、タンニンがしっかりと戻ってきて、ある程度の厳格さまである。ファーストアタックが魅力あふれる2つの年(89年、90年)に酔いしれた後、観客は立ち往生してしまった。しかし!現在ワインは丸みが出てきており(これはしかるべき成熟が進んだ証拠)、素晴らしい新鮮味を持ちながら、若い時の攻撃性はなくなっている。91年は当たり年にふさわしいバランスと複雑味を呈している。チャーミングで飲み頃が到来した感じがする。 リシュブールとクロ・ヴジョはとくに極上のデリカシー(繊細さ)がある。ヴォーヌ・ブリュレとクロ・パラントゥ、コルトンはかなりしなやかになってきた。ニュイ・ミュルジェはまだ少し閉じているが、待つ価値はある。このヴィンテージを代表するワインには間違いないので。


1992年: さりげなさの魅力
夏とヴァンダンジュの時期の気象条件は全般に良好だったが、この年は酸味が弱いことがわかり、樽熟成が難しかった。結果は魅力のあるワインと解釈できる。素早くあふれ出て何の疑問も持たずに飲むことができるから。 若いワインが好きな愛好家には喜ばれるワインだ。グラン・ヴァンの方はどうかというと、現時点ではかなりの複雑味を擁している。それでも慌てて飲んではいけない。事実、飲む機会があるかどうかの問題でもある。まだカーヴにある90年を飲み終えるよりも92年の瓶を開けたほうが得策だろう。 唯一、ヴォーヌ・ブリュレだけは、まだ何年か待たないといけない。


1993年: ブルゴーニュにとっての奇跡の年
天候は厳しいものだったが、総じてまれに見る年となった。ブドウは完璧で、小粒で健康、ブドウの果皮がとても厚く、ワインに凝縮感と深い色を与えた。 アフターに酸の味わいが残るなら、成熟の条件としての証拠だが、大変強いメントールと黒い果実の香りを放つ「野性味のある」アロマをもっている。 この年は、少し厳格だが、バランスはとても良い。アロマとブルゴーニュのピノ・ノワールの質的なポテンシャルが高いことの証明であり、ピノの典型的な味わいの多様な面を垣間見ることが出来る。この年のワインは長期熟成向きでしっかりと保存されるべきである。いくつか、ヴォーヌ・ショームやニュイ・サンジョルジュなどは飲みやすくなってきている。が、これらも他のアイテムと同様、まだ長い旅路の入り口に位置しているとしか言いようがない。


1994年: 「チビッ子」の逆襲
日照不足からブドウは危険にさらされ、そのためワインの凝縮感は緻密ではない。でもヴァンダンジュに続く選別の努力でこのヴィンテージが落とし穴に落ちることを食い止めることができた。それなりに、ワインはバランスが取れている。最初にあった渋味は取れ、現在ピノの繊細さとテロワールが十分に表現されている。優しさが見受けられるところから、この年はドメーヌのアペラシオンの多様性を引き出させるものであるという愛好家もいる。現時点で全てのアイテムにおいて良好なバランスに達している。


1995年: わずかな生産量で最高の品質
天候は悪くなかったが、ヴァンダンジュは例年に比べて遅くなった。ブドウは腐敗の損害を全く受けなかった。厳しい選別の後、ワインは力強く、肉付きも厚くなってくる。カーヴでは、熟成の時間をじっくりとかけていた。これは、かなりの長期熟成タイプになる兆候だ。一方でかなりストラクチャーもはっきりしているが、熟した赤い果実のアロマが最終的にこのワインのバランスを取らせている。何も心配することはない。何年か後にこのワインは開くはずだ。現在は攻撃性が消えてニュイ・ブドーのようなワインはすっかり飲みやすくなっている。だが、アロマの点に関しては、まだ移行段階だ。


1996年: すごい怪物、90年と93年のミックス
ブドウの成熟の条件においては、今回は行き過ぎてはいない。問題のない天候で、誰でも好むように、9月はとても良い天気に恵まれ、よく太陽が当たり、涼しかった。よく熟したブドウからできたワインは凝縮感があり、滑らかだ。 酸味もしっかりとあり、まさに摘んだばかりのような黒い果実のアロマの新鮮さを引き出している。この年のワインの熟成はゆっくりでいて、ストレートでいて魅惑的でもある。内側に秘めた大きな調和を持っており、口の中で溢れる音楽であり胃袋は喜ぶもの。「全て一緒になって、すごいことをするんだぞ」とワインが言わんばかり。多くの可能性を持っているが、今の段階ではポテンシャルの状態で、話すことしかできない。


1997年: 瓶の中に太陽がある
ああ!ブドウはとってもよく熟している、田園の気候だ・・・ヴァンダンジュはほとんどヴァカンスの時期だった。だから丸みがあって、チャーミングで喜びをもたらし、甘いアロマが香るのも驚く必要はない・・・もちろんカーヴでの熟成は早く、熟成段階の最後からさらに瓶詰めをしてからもストラクチャーを産み出すことが続いた。多くのアイテムは果実味が充実しており、現在とてもおいしい試飲ができる。クロ・ヴジョ、ヴォーヌ・ショーム、ニュイ・サンジョルジュは、香りがかなり若いが味わいは本当に繊細。ヴォーヌ・ヴィラージュ、コルトン、ヴォーヌ・ブリュレ、ニュイ・ミュルジェはすっかり飲みやすい状態だが、まだ後2〜3年完全に洗練されるのを待つ必要があるだろう。


1998年: きまじめ
このヴィンテージは前年のような魅惑的なキャラクターを持っていない。良いか、悪いか?少々ストラクチャーのしっかりとしたブルゴーニュワインを好む人もいる。そして97年のようなほほえましいキャラクターの方を好む人もいる。98年の天候は疑う余地なく前年よりも厳しいもので、幸いにもヴァンダンジュの何日か前になって天候は回復してくれたので、ブドウが十分に最後まで熟することができた。厳しい選別が必要だったわけだが、ワインは堅かった。アタックは豊かで、明らかに成熟度が伺え、余韻はほんの少し堅い。心配する必要は?まずない。前年のアイテムのようにうまく熟成していくために十分なバランスをもっているからだ。


1999年: 見事

もしドメーヌがここで幕を閉じるなら、まさに優秀の美を飾ることができると言えるかもしれない。何というヴァンダンジュ!何というヴィンテージ!9月はまばゆい太陽が降り注いだ・・・その晴天は雨でブドウの摘み取りがかき乱されたヴァンダンジュの前まで続いた。湿ったブドウを入れてはいけないということで、私達の神経はひどく辛い目に合ったものだ。この重要な点に触れながらも、ブドウは全ての面でまれに見る出来だった。よく熟し、品質は大変均一、そして・・・とても豊作だったこと。ワインはとても将来有望で、地味でいて、食欲をそそるタイプ、グルメ好み・・・1990年の品質やスタイルとライバル視されて評価できるヴィンテージだ。90年ものの複雑味がある。これは時間と共に発展していくもの。魅力があり、ワイン愛好家によくよく言って置く必要があろうが、あまり早くに瓶を開けてしまわないように。99年は硬派で美味しいワイン、グルメで溢れんばかりの量で、インスピレーションの沸いたブルゴーニュを彷彿とさせる。


2000年: 99年と多くの共通点あり

現在、ワインは全部瓶詰めされているので、進行状況について主だった段階を記すこととしよう。収穫は豊作で、かなり早摘みだったこと、素晴らしいブドウの成熟がある。最初ワインはストラクチャーよりも魅力先行型で少しがっかりした。しかし、この見解は熟成3ヵ月後にガラリと様相が変わった。収斂性があり、本当の色合いがでてきたのだ。それからずっとこの傾向は強まるばかりだった。今では、このヴィンテージは大変満足いく年であると言うことができる。それも酸味の点で比較できる年である97年を上回るコンセントレーションを持ち合わせている。99年と同じブドウの熟成度だがストラクチャーは異なる。だからよりアクセスしやすいワインといえる。この年はコート・ド・ニュイで成功をもたらしたとして、官能的で、熟していて、ゆったりとした味わいのワインは気難しいワインの愛好家の関心を捉えてはなさないだろう。 2000年ものは99年ものを早く試飲できる代用に相当するだろうが、特別に急いで2000年を飲むことはない。